学生時代はあんなに貪るように読んでいた小説が、ここ数年、読めなかった。
小説なんて、しょせん「つくりごと」。
つくりごとより、もっとリアルな話の方が面白くて、ためになるから、科学や実用書ばかり開いていた。
でも、人の心を感動させる文章って、小説の方が多いんじゃないかと思った。
最近、よしもとばななさんのエッセイを読んで、小説家の文章は、やっぱり違うよなと思うようになった。
人を感動させるような、感情がのった文章を、自分も書きたい。
そのためには、自分が感動するような文章を読まなければいけない。
ちょうど、「ためになる」読書に飽きていた。
「ためになる」ためには、だらだら読んでられない。
本の内容を、少しでも自分の血肉にしなければ!と思って、必死で読まなければいけない。
けど、そのプレッシャーにちょっと、嫌気がさせいていた。
誰にも、「この本を読んで、自分の知識にして、もっとよりよい人間になりなさい」なんて、命令されていない。
でも、自分で自分に命令して、それができなくて、自己嫌悪に陥っていた。
昔、読書は娯楽だった。自分の楽しみのためのものだった。
時間を過ぎるのも忘れて、読書に没頭する時間が好きだった。
役に立つとか、かっこいいからとかじゃなくて、ただ純粋に、好きだったのだ。
そんな気持ちを思い出したくて、もう一度、小説をよみたくて、リハビリに薄めの小説を、図書館で借りた。
ちょうど、娘と二人の小旅行。
宿で時間も持て余すだろうから、旅のお供に持って行こう。
そう思って、持って行った小説が面白くて、一気に読んでしまった。
長さも、文体もちょうど良いい。
読んだのはこちらの本。
小学校の体育館裏で、きりこが見つけた黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ人の言葉を覚えていった。両親の愛情を浴びて育ったきりこだったけれど、5年生の時、好きな男の子に「ぶす」と言われ、強いショックを受ける。悩んで引きこもる日々。やがて、きりこはラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。きりこが見つけた世の中でいちばん大切なこととは?読者からの熱烈な支持を受け、ついに文庫化。
西加奈子さんは、時々、図書館で拝見していたお名前だが、彼女の本を読むのは初めて。
テヘラン生まれの大阪育ちって。テヘランって、響がかっこいいなぁ。
物語の舞台は大阪。
大阪弁の文体は関西育ちの人間には、心地よく響く。
優しい文体で、すっと物語の中に入っていける。
人間は中身がすべてと思っていたぶすのきりこの、心の成長。
子どもの頃に出会いたい本だった。
いつか、娘にも読んでほしい。
「中身」も「入れ物」も全て「じぶん」。
大袈裟かもしれないけど、人生で大切なことが書かれていると、私は思った。
登場人物みんなにドラマがあり、成長がある。
ページをめくる手を止めることができなかった。
娘と二人で泊まった宿はボロボロだったけど、その不快さも忘れてしまうくらい、没頭して読んだ。
やっぱり、小説はすごい!
図書館で直感で選んだけど、すごくいい本を選んでしまったと自画自賛。
また、本を読もうっと。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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